2015.4.26

〜あなたはそれを捨てられますか〜
 私が看護学校の教員をしていた頃、終末期にある患者の看護を教えていた事があります。考えてもらうためにまず、今自分のとても大切にしている物や将来の夢や希望などを5つ、小さな紙に一枚ずつ書いてもらいました。皆に大切にしている物を話してもらうととても生き生きと楽しそうにしていました。そこで、話が終わった頃、「あなたは余命3ヶ月と宣告されました。捨てることのできる物から一枚一枚破っていってください」と言うと、沈痛な雰囲気となり、泣きながら破っていく学生もいました。物やお金、将来の夢や希望が全てなくなるからです。大切な家族とも別れなければなりません。死を体験するのです。そのあと、私が死にかけた事のある実体験を話しました。「呼吸が一時的に止まって、突然真っ暗になり、痛みもなく音もなくなってしまいました。それでも小さなトンネルの向こうに必死になって呼ぶ医師の姿が見えるのです。助かった時、初めて点滴やモニターがつけられていた事に気づきました。」そんな話をすると学生たちは食い入るようにじっと話に聴き入りました。いつか、死はやってきます。その時、イエス様が「神様の御心のままに」と十字架にかかられたような死に方ができるでしょうか。何もできない教師でしたが、学生達が生きる意味や命の尊さをわかって臨床に立つ看護師に育って欲しいと願っています。
                     I.C姉