2018.12.9

『 もう一人の恵まれた女性 』ルカによる福音書2:36〜38)
 聖書に記されているクリスマス物語は「待ち望む」人たちに臨まれた神の愛のドラマで満ち満ちています。その中でも、少し地味ではありますが、クリスマス物語から除くことのできない二人の物語があります。それが「シメオンとアンナ」の話です。とりわけ老人であるこの二人に共通していた生き方こそ、「待ち望む」という姿勢を一生涯貫くことでした。その二人のうち、女預言者とされているアンナの物語を分かち合いたいと願っています。
 聖書は「アンナ」のことを「女預言者」と紹介し、しかも彼女が「やもめ」であったと記しています。結婚して7年経ったある日、夫に先立たれてから84歳になるまで約60年ほどの期間を一人で暮らしていたということでした。それに加え、アンナは生涯をかけて神の神殿を離れず、夜も昼も神に仕えながら「断食と祈り」を大切にしていたと教えます。皆さんがもしアンナのような立場であったら、どんな行動をとられるでしょうか。恐らく恨みと憤りをもって神を離れてしまうかもしれませんし、新しい出会いを求めていたのかもしれません。また寂しさと悲しみに包まれて生きたかもしれませんよね。しかし、本文の彼女の姿から恨みや後悔、悲しみ、寂しさなどは見られません。
 クリスマス物語に登場する女性の中に、「恵まれた方」と呼ばれた女性がいました。その女性こそ、主イエスの母マリアです。「乙女が神の独り子メシアを産む」という旧約の預言を成就するために神に選ばれたマリアでした。その時天使ガブリエルより「恵まれた方」と呼ばれたわけです。このことで彼女は石打ち刑で殺されても仕方ない大変厳しい状況に置かれることになりますが、マリアは神からの召命に「アーメン」で答え、真の恵まれた女性になったわけです。
 そこで紹介したいもう一人の恵まれた女性が「アンナ」です。もともと「アンナ」という名前は「恵み」という意味を持っています。しかし、どうでしょうか。彼女の人生は名前通り恵まれていたでしょうか。世の価値観から見ると決して恵まれたとは言えません。むしろ神を呪いたいくらいだったかもしれません。しかし、アンナには神よりいただいた召命がありました。「この世の罪をすべて取り除き、贖い、救ってくださるために神が人として生まれる。あなたはそのみどりごを見る。そのみどりごメシアを見るまで、そのことを証しするまでは決して死なない」という召命でした。アンナはそのような神からの約束を「アーメン」と受け入れ、メシアの生まれるのを待ち望んできたのです。いよいよ神の約束が主イエスを通して成就した時、彼女は喜びに満ち溢れ証しすることで神からの使命を果たすことができたのです。ほぼ60年間に及んだ彼女の待ち望みの喜びと感動をあなたは感じていますか。
 神よりいただいたメシアの誕生を待ち望み、生涯を愛の奉仕と祈りと断食を続けてきた恵まれた女性アンナ。今あなたが生かされている理由こそ、成すべき使命があるからではないでしょうか。その使命を果たすまで生かされることを覚え「恵まれた人」としての人生を全うしていきましょう。クリスマスの恵みが豊かにありますように…。ハレルヤ!